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書誌詳細

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教室マルトリートメント

  • 著者名川上/康則‖著
  • 出版者東洋館出版社
  • 出版年2022.4

貸出・返却・予約状況

  • 貸出状況 貸出中
  • 返却予定 2025年12月20日

  • 所蔵数1
  • 貸出可能数0
  • 貸出累計10

所蔵事項

  • 請求記号375.2-カ
  • 貸出区分持出可能
  • 配架場所 図書館
  • 所蔵状態所蔵

書誌事項

  • 書名ヨミキョウシツマルトリートメント
  • 著者ヨミカワカミ,ヤスノリ
  • 原書名Classroom Maltreatment
  • ISBN9784491042626
  • 出版地東京
  • 出版者東洋館出版社
  • 出版年2022.4
  • 出版者・頒布者地域名 東京都 
  • ページ303p
  • サイズ19cm
  • 件名生徒指導
  • 内容文献:p295〜303
  • 内容紹介事情を踏まえない頭ごなしの叱責、忘れ物をした子どもを一定時間許さないなど、違法ではないが適切ではない指導が学校を支配するのはなぜか。その要因を教育界の構造的な問題から検討し、改善プランを提示する。
    マルトリートメント:不適切なかかわり・養育
    “教室”マルトリートメント:教室で行われる子どもの心を傷つけるような不適切な指導を示す造語
    「教室マルトリートメント」。本書のタイトルであるこの言葉は、筆者である川上康則先生(東京都立矢口特別支援学校)の造語です。教室内で行われる指導のうち、体罰やハラスメントのような違法行為として認識されたものではないけれども、日常的によく見かけがちで、子どもたちの心を知らず知らずのうちに傷つけているような「適切でない指導」を取り上げています。
    例えば、事情を踏まえない頭ごなしの叱責、子どもたちを萎縮させるほどの威圧的・高圧的な指導などは分かりやすい例です。しかし、本書ではもう少し掘り下げて、褒めるべき時に褒めないとか、「子どもにナメられるから」という理由で笑顔を見せないといったことについても、教室内を重い空気感で包んでしまう指導として取り上げたいと思います。
    「マルトリートメント」という概念は、海外ではチャイルド・マルトリートメント( child maltreatment )という表現で広く知られています。mal(マル=悪い)+treatment(トリートメント=扱い)で、マルトリートメント。「不適切な養育」「避けたい関わり方」「行われるべきでない指導」などの意味で使われます。
    日本の児童虐待防止法で定められた内容(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)よりも広い概念で語られ、子どもの将来を案じてよかれと思って行う「しつけ」や、大人が過去に受けてきたからという理由で行われる指導であったとしても、子どもの育ちにマイナスであれば許されていません。マルトリートメントは、子どもの心にトラウマ(心的外傷)をつくるとされ、脳の一部の萎縮や肥大などの変形につながることも、小児神経科医の友田明美氏の研究によって報告されています。
    マルトリートメントは、基本的に親子関係の養育において扱われる概念です。
    しかし、不適切な関わり方や本来であれば行われるべきでない指導といった視点から見てみると、教育関係者こそ、常に気を付けておくべき概念なのではないか――。本書では、そのような問題意識のもと、密室空間である「教室」で、「指導」の名の下に子どもたちを傷つけるような関わりが、知らず知らずのうちに行われていることがないか、検討していきます。
    本書では、違法行為の一歩手前のレベルの「行き過ぎた指導」から、これまでは当たり前に行われていた指導だけれども、改めて考えると子どもの心を傷つける要素をもつ指導まで、幅広く「教室マルトリートメント」として整理し、教室マルトリートメントに陥らないための予防と知識を押さえていきます。さらに、自分が「教室マルトリートメントをしてしまっているかもしれない」という場合に、今すぐに実践したい立て直しから、常に行いたい教師としての自己検証のやり方まで、その改善方法を具体的に提案していきます。
  • 著者紹介筑波大学大学院修了。東京都立矢口特別支援学校主任教諭。公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士スーパーバイザー。著書に「子どもの心の受け止め方」など。
  • 目次序章 「違法ではないが、適切ではない指導」が学校を支配する 1
    第1章 はりつめる教室
    マルトリートメント(maltreatment)とは 1/「静かでおとなしいクラス」で、何が起きている? 20/処分の対象となっている「体罰」と「わいせつ行為」 23/特別支援学校における教室マルトリートメント 28/パニックやフラッシュバックを誘発する教師の毒語 32/教室で行われる「ネグレクト」 39/「社会的参照」と「忖度」の大きな違い 49/あらためて「教室マルトリートメント」を定義すれば 52
    第2章 教師が子どもを傷つける
    トラウマを考える三つのエピソード 57/罰や脅しはエスカレートする 60/恐怖、失敗、悲しい出来事は、記憶に残りやすい 65/罰や脅しによって植え付けられた感情の影響 68/デリケートな脳、日常的に起こり得るマルトリートメント 72/「熱心な無理解者」 75/「教室マルトリートメント」が子どもの育ちに及ぼす影響の仮説 77/トラウマとフラッシュバック 84/フラッシュバックに至る「因縁果」の法則 87/不穏・興奮状態への具体的な対応 90/成人後も苦しむことに 96/「逃れられなさ」の構造 98
    第3章 圧は連鎖する
    教室に吹かせている教師自身の「風」を感じ取る 103/「風」が続くと「圧」になる 104/圧の急激な降下がもたらす「ダブルバインド」と強い圧の連鎖 108/柔軟さと寛容さをもち合わせた教師でいるために 109/学校は予定調和の場ではない 112/教師はこうしてこじらせていく 113/こじらせ教師が醸し出す、独特の雰囲気 116/こじらせ教師化を予防する他者の視線 118/コミュニケーションとマルトリートメントの因果関係――保育現場の事例から 120/家父長制の雰囲気が強い職員室でのストレス 122/放課後の職員室のコミュニケーションをどう変えるか 124/教師間のパワーハラスメント 127/教師のストレスの源流 130/学校は「ジェンガ」で「交通整理員」不在の組織 134/過度な要求×自己裁量の少なさ×教師間のサポートの無さ 136
    第4章 教室マルトリートメントを防ぐ
    教室マルトリートメントの根源は何か 139/「成功モデル」の追求を見直す 140/確実に変えられることから着手する 144/子どもの育ちは「促成栽培」ではない 146/プロクルステスのベッド 148/教師もまた「型に押しはめられている」 151/「認知バイアス」が能力を超えた過度な期待と要求を課す 154/そもそも「足並み」はそろわない 160/子ども理解とは、知識の伝授ではなく「体質改善」 161/ボディイメージ 163/「無理解」と「誤解」はマルトリートメントにつながりやすい 166/学習性無力感 168/子どもの「安全基地」でいること 171/ラポール(信頼関係)を築くこと 174/「子どものもがきの代弁者」になる 176
    第5章 教室マルトリートメントを改善する
    もしも「教室マルトリートメント」に陥っているのでは? と感じたら 183/プラン1 自身の「教師モデル」を振り返る 184/プラン2 教師としての「成長ステージ」を知る 188/プラン3 校内にいる「当面の師」と「当面の反面教師」から学ぶ 194/プラン4  自身の「子ども観」を振り返る・見直す・覆す 197/プラン5 授業内でのファシリテーション力を高める 204/プラン6 安心して「分からない」が言える学級・教室をつくる 212/プラン7 子どもを褒める回数を増やす 220/プラン10 子どもの心に傷を残す「毒語」を使わない 224/プラン9 職員室内の良質なコミュニケーションを増やす 230/プラン10 自ら学ぼうとする「学び手体質」をキープする 232
    第6章 安全基地としての学校
    教師が「笑顔」で「常にそこにいてくれる」という安心感 239/人の意欲の根っこには「愛情」が欠かせない 242/教師の「安全基地」はどこにある 243/「やりがい搾取」の原因は、学校に向けられた「欲しがり過ぎ」 246/そして、「♯バトン」まで渡された 248/「SOS」が出せない 251/現状に憤りつつも漂いながら、子どものための「防波堤」たれ 254/空白に耐える力―ネガティブ・ケイパビリティ 257
    巻末対談 教師の傷を癒やし、教室マルトリートメントを断つ 友田明美×川上康則 261
    終章 教室の空気を換えていきたいあなたへ
    引用・参考文献